『絵の旬』
果実は朽ちる。
朽ちる直前に旬はやってくる。
「絵の旬」
自然のモノは、日々形を変えていきます。
絵は、美術館に行けばいつでも同じものが見れる永遠のモノだと思われていないでしょうか。
しっかりと考えれば分かる事ですが、絵の具の色は退色するし、火が着けば消えてなくなります。
実は、昨日と今日とでは形を変える、自然のモノなのです。
「ピカソの絵が来てるよ」
「10年前に見たから今回は見なくていいや」
極端ですが、人間に置き換えて考えてみてください。
10歳の子供が20歳の成人に成長していたら、全く違う人間になっているかもしれません。
もし、好きな絵(人)があるならば、ずっとその変化を見守るのも素敵なことではないでしょうか。
さて、見所は、色が退色して変われば構図はもちろん、絵の意味さえも変わっていくところ。
使っている色、混合方法によって、退色スピードが違うというところ。
そして、それを仕掛けとして考えて作られているモノたちは、そこに存在しているのです。
すごいよ。
そして、忘れてはいけないのは作家本人にも旬があるということ。
女の子が女性になるように、絵や線が濡れていく瞬間は人生で一度しかないのです。
しかも、青春時代のように短い。
その後、色香を感じたとしても、それは既に違う色気なのです。
もしも、この瞬間に立ち会えているとしたら、
同じ時代に生きていることに感謝するしかないでしょう。
好きな作家が亡くなっている場合は、想像しましょう。
旬はいつ来て、いつ朽ちたのか。
青い色香か、それとも朽ちる前の本当の旬なのか。
貴方の好きな作家が生きて制作を続けているときは、旬を絶対に見逃さないでください。
その上に、見ている側も成長しているわけです。
もしも、見続けていたなら、その調和が本当の名画を生むのではないのでしょうか!
今生きていて、そこに好きな作品(瞬間)があるなんて、なんて偶然でしょうか、本当素敵!!
それが、濡れている最中なら!!!
さあ、今すぐ原画を見に行きましょう。
図録や作品集では分からない。
大好きな絵(人)に何度も会いに行きましょうよ。
2006 ∞