『「自然」と「不自然」』
絵を習い始めると最初、モチーフを「自然」に描くことを教えられます。
絵では、違和感が邪魔になってしまうからです。
では、なぜ違和感が邪魔になるのでしょうか?
それは絵の中で、視線の操作や目的を伝える仕掛けは、人工的であり「不自然」な行為です。
「不自然」は、絵の中で違和感として現れます。
違和感ばかりの絵の中では、その「不自然」の違和感は紛れて分からなくなってしまうのです。
「不自然な仕掛け」は「自然」の中で、より高い能力を発揮します。
なので、まず違和感無く自然に描けることは、絵の基本となる訳です。
では、どのように「仕掛け」を作るのでしょうか?
絵の具で説明しましょう。
絵の具は、顕色材と固着材から出来ています。
簡単にいうと、顕色材は、色。固着材は、つなぎ。
色は、顔料(石を細かく砕いたものや、科学合成された粉末)等で出来ていて、つなぎによって定着します。
つなぎに油を使えば、油絵の具になり、樹脂を使えばアクリル絵の具に、にかわ等の水に溶けるものであれば水彩絵の具になるという訳です。
まず、
顕色材を顔料のみにして、固着材を水とします。
コップに水を入れいろいろな顔料を放り込み、かき混ぜます。
かき混ぜるのをやめます。
すると、当然顔料は質量の重い順番に底に沈殿していきます。
最初に重い顔良が沈み、最後に軽く細かい顔料が水の中を漂い続け、最終的に水分の蒸発、乾燥とともに定着していきます。
これは「自然」です。
次にこの沈む順番を逆にします。
この「仕掛け」は、そんなに難しくありません。
紙に描く場合であれば、絵の具を載せた後に素早く紙の天地(表裏)をひっくり返せば良いのです。
そのまま乾燥させます。
するとあら不思議、沈む順番の逆になった色が出来上がります。
これは、天地を逆さに見る天井画にしない限り、どう考えても「不自然」です。
(天井画を床において描くと、逆のことが起こります。注意しましょう)
しかし、透明度の高い同じ絵の具でこの二つを制作した場合、顔料の数は一緒なので色は変わりません。(顔料の量が多いと重なり具合で変わりますが)
それでは実験、同じ「仕掛け」で100枚の絵を描きます。
99枚は「自然」な絵、1枚だけ「不自然」な絵。
この100枚を一度に見えるように展示してみましょう。
すると、人の目はその「不自然」な1枚を100枚の中から必ず拾いだして見てしまうのです。
すごいですねー。
私も個展で実験してみましたが、ほぼ100%出ました!
立証レポートは、時間ができたらそのうち書きます。
20120215 ∞