『何もない』

「おーい。何かあったのか?」と聞かれたら「何もない」としか答えようがない。もう少し気を利かせた聞き方は無いものか。「身体は大丈夫か?」とか「痛いところはないか?」とか、具体的であれば「身体は平気だ」だの「少し肘が痛い」だの答えやすいものだが、「何かあったのか?」と聞かれてしまえば「何もない」。転んだわけでもないし、事件があったわけでもない。ただ、大きな音があっただけ。「ドンガラガッシャン」だったのか「ドドドドドーン」だったのか、思い出せないが、それはそれはとてつもなく大きな音だった。とは言っても、何かが起こったわけでもなく、音以外は何もない、近くに人もいなかったので、ただただ驚いたのみ。しかしながら、それだけの音が立ったわけなので当然周りから人が集まってくる。「おーい!何かあったのか」いや何もない。身体は健康だし、肘が少し痛いのも昨日の運動のせいだ。そのほか周りに変化も何もない。何故か音から一番近いところにいたせいで、みんな私に「おーい、何かあったのか?」次々集まる人に向かって「何もない」「何もない」


20210310 ∞